『注文の多い料理店−イーハトーヴ童話集』宮沢賢治

注文の多い料理店 (新潮文庫)
宮沢 賢治
新潮社
1990-05-29



東京から来た二人の若い紳士が、イギリスの兵隊の格好をして山に出かけ、
立派な一軒の西洋造りの家をみつけました。

玄関(げんかん)には、次のような看板がかかっています。

RESTAURANT
西洋料理店
WILDCAT HOUSE
山猫軒


二人が店内に入ってみると、
「当軒は注文の多い料理店ですからどうかそこはごしょうちください」
という注意書きが目に入る。

扉を開けて中に入るとまた注意書きが表れる。
「髪をとかして、履き物の泥を落とすこと」

二人が扉を開けて中に進むごとに注意書きが登場する。

その中のひとつは、
「ネクタイピン、カフスボタン、眼鏡(めがね)、財布(さいふ)、その他金物類、
 ことに尖(とが)ったものは、みんなここに置いてください」

そして、
「二人はめがねをはずしたり、カフスボタンをとったり、
みんな金庫のなかに入れて、ぱちんと錠(じょう)をかけました。」


その後どうなったかは、ご存知の通り。
落語の枕のような出だしで始まり。
中盤の山猫軒での様子は非常にテンポよく、好奇心から緊張感へかわり、
恐怖心が盛り上がっていきます。

都会の人間と山の動物の逆転の関係がよく描かれています。
本来、身ぐるみ剥がされるはずの山猫が、都会人の身ぐるみを剥がす。

宮沢賢治の実家は質・古着商を営んでいました。
もしかしたら、父の手伝いをした宮沢賢治にとって
「ネクタイピン、カフスボタン、眼鏡(めがね)、財布(さいふ)、その他金物類」は、
幼少期から馴染みのある品物、様々な種類を知るものだったのかもしれません。

この作品が出版されたのは大正13年。
大正期のモダーンな紳士の装いに興味が膨らむ童話でもあります。

『注文の多い料理店』で、紳士が置いてきたカフスボタンは、どのようなものだったのだろう??
次回のブログでは、カフショップのご近所、神田神保町で、『注文の多い料理店』のカフスボタンを探したお話をお届けします。


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