『松山趣味―人生を愉快にするモノたち 』松山 猛
日本放送出版協会 1999年


松山猛氏は、映画 『パッチギ!』の原作「少年Mのイムジン河」の作者。
「帰ってきたヨッパライ」の作詞家として有名。
時計愛好家ならば、きっとご存知の松山猛氏のエッセーです。

本書では、カフスボタンのほか、画材、カメラ、ネクタイ、シャツ、釣具、カップ、ソーサーなどを取り上げています。
合理化や大量生産によって、物が安くなるのはよいが、それによって物の本質が失なわれるのは、文化にとって不幸な事。
そして、昔の時代を知る者として、本物が持っていた味わいを伝えてみたい、というプロローグから始まります。

カフスボタンの項では、著者の父親のシャツとカフスボタンについて触れられています。
昭和30年ごろまで、フレンチカフス(ダブルカフス)の起源ともいえる、襟と袖口の取り外せるシャツが、シャツの標準であった。
松山氏の父親は、出張が多い日々、荷物を最小限にまとめるため、襟と袖口を取り替えられるそのシャツの愛用者。
父親の愛用品のカフスボタンは、銀に七宝の模様あるもの。
今思えばアールデコ風の八角形のスナップ式のもの。


また、著者自らのカフスボタンのコレクションが、挿絵入りで紹介されています。

とても素敵なコレクションです。
以下、その内容の一部。

 ■父の形見のカフスボタン。スナップどめスタイル。

 ■19世紀のイギリス製。
  元の持ち主のイニシャルが彫ってある楕円を鎖でつないだ金製のもの。

 ■フィンランドの骨董屋でみつけたキリル文字の彫られた銀製カフリンクス。

 ■注文品のハート型のプラチナ製。
  (一番の宝物。プラチナの時計と合せ、質感を楽しむ)

 ■金を編み、そこに棒状のヘマタイトあしらったカフスボタン。
  (もうひとつの宝物。ヴァセロン コンスタンチン本店で見つけたもの)

豪華な宝石入りもよし、素朴なものもよし、最近は女性のブラウスやシャツもカフスボタン仕様が増えてきているので個性あふれるカフスボタンを楽しんでほしい。
加えて最後に「要は、カフスを楽しむ、時間のゆとりそのものが大切なのだから」でしめくくられています。

グラフィック・デザイナーで、『ブルータス』などのスタイリッシュな雑誌の編集者、記者として活躍された松山氏。
海外の食・時計・ファッションなど、生活を楽しみ、豊かにする優れた人、モノ、文化を早くから日本に紹介してきた著者ならではの感性が感じられました。


★カフショップ公式サイト(ネット通販)
カフリンクス(カフスボタン)専門店カフショップ

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